風俗嬢デビュー①
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私は関西旅行から戻ると数日で
22年間住んでいた地元を逃げるように立ち去りました。
両親や友達はもちろん反対していたけれど、
母親だけは最後に「もうそこまで言うなら仕方ない、何かあったら必ず連絡しなさい。」と言ってくれました。
私の気持ちを汲み取ってくれたのか、はたまた呆れだったのか分からなかったのですが、どちらにしても母なりの優しさを感じました。
あの時の私は、傍から見れば単純に自分を見失っている人だと思われていただろうし
それは間違っていなかったのかもしれません。
ただ、私はこのタイミングで関西に行かないと
確実に後悔することを自分で分かっていました。
誰がなんと言おうと、それだけは断言できました。
今でも、この頃の気持ちは覚えています。
こんなにも周りに対して強引に自分の意志を通したのは初めてで、私の人生の転換期だったのかなと改めて思います。
そして関西に戻り、彼のマンションで同棲が始まりました。
彼は私の一つ年下で、関西でかなり有名な大学に通っていました。
少し派手な見た目から、人付き合いも得意そうなのに
どこか暗い雰囲気をもっていて、私はその部分に凄く惹かれていました。
この頃はお互いのことをほとんど知らなくて、
もっと言えば自分の気持ちも分からなくなるほど不安定な状態でした。
手探り状態で同棲生活がスタートしました。
私は無職で彼も夏休み中だった為、一緒に過ごす時間だけはいくらでもありました。
二人で近所のラーメン屋に行くだけでも楽しくて、毎日が新鮮でキラキラしていたのを覚えています。
そして、私はあんなに悩んでいた不眠の症状がなくなりました。毎日、彼と寝る前にいろんな話をしていました。
その時間が大好きで、いつも話の途中で気付いたら眠っていました。
二人の時間がゆっくり過ぎていきました。
「働かないとなあ」
ぼんやりと思い始めました。
お金は正直あと数ヶ月もすれば、ほぼなくなってしまうことに気づいていました。
彼もバイトと仕送りはあるものの、当たり前に自分ひとりで生活する分です。
迷惑をかける訳にもいかないと、ここでやっと仕事について考え始めました。
勢いだけで新生活に足を踏み入れた私にとって、夢から醒め、現実を突きつけられた瞬間でした。
この後わたしが風俗で働くことを決めるまで
そう時間はかかりませんでした。
その頃の私は精神的に落ち着いていましたが、正社員として毎日8時間働くのは冷静に考えて不安がありました。
前職も専門職だった為、正社員で雇って貰える場所は限られることも理解していました。
パートやアルバイトでお給料を貰うなら
一か八かで風俗で稼いでみたいと思いました。
時間も融通が効くし短時間でお金も稼げる、そんな安易な考えでした。
他者からすると、そんな理由で身体売るの?と思われる方が多いと思います。
そんな理由なんです。
けれど、ひとつの落とし穴として言いたいのは
風俗は始めるのは簡単だけど、辞めるのは本当に難しいです。
良くも悪くも、私も彼も風俗に偏見がありませんでした。今思うと自分でも異様なカップルだったと思います。
絶対彼に隠れて働くことだけはしたくなかったので、全て自分の気持ちを話しました。
彼は少し目線を逸らした後に頷いて、
「それなら一緒にお店決めよう」と言いました。
候補のお店はすぐに決まり、次の日に面接と体験入店をすることになりました。